AWS, Azureという名の新たな世界へ

なぜこうもAWSやAzureがIT業界のインフラ構築の主流となり、オンプレミスを過去のものとしたのか。勉強を続ける中で考えていた。元々、自分自身が感じていたのは、経営者やシステム管理者視点で納入リードタイムや、初期コストの最小化というメリットであった。それは実際にこれらクラウドサービスに触れた事が無い人でもイメージしやすく、また明らかにメリットとして存在する。これが一つ目の理由である。

一方、自分自身が実際にAWS,Azureを学び、触れ、構築した過程で感じた事は、「純粋に面白い」という事であった。これが二つ目の理由であり、エンジニアの視点では実はこここそが最も大きな理由では無いかと感じている。AWSやAzureにはインフラの世界が箱庭のように存在している。そして、現実世界でITシステムを構築する際のあらゆるレイヤのサービスが詰め込まれている。例えば、PCのキッティング、L2/L3スイッチ、DNSサーバ、NTPサーバ、DHCPサーバ、メールサーバ、WEBサーバ、DBサーバ、ファイアウォール、ロードバランサ、CDN、共有ストレージ、バックアップ設計、DR設計などの一連のインフラの機能が、自らの描く設計図に基づいて構築できる。これらのサービスは互いに高い親和性を持ち、機能連携を円滑に行う事ができる。

また、AWS,Azureは現時点ではAWSが高いシェアを保持するが、日ごとにAzureが猛烈な追い上げを見せている。これら二つのクラウドソリューションは、互いのサービスを常に模倣し続け、新たなサービスを生み出し続けている。先に述べた、枯れたインフラサービスのみならず、コンテナサービスやサーバレスサービス、キューサービスなどを新たに生み出し、お互いがサービス品質の面では一歩も譲らず、熾烈な競争を繰り広げている。

これらの先進的なサービスは、AWS,Azureという世界の住人にだけもたらされる。例えば、AWSのS3を利用する住人が、同じくAWSのLambdaとEQSと組み合わせた、ファイル自動化のサービスの恩恵を享受できる。同じくAzureの住人には、Azure BlobとAzure Service Bus、Azure Cosmos DB, Azure Synapse Analyticsを組み合わせた、IoTのデータ集積のサービスの恩恵を享受できる。これは、明らかにサービスの囲い込みである。クラウドソリューションは、単なるオンプレミスから仮想環境への、物理マシンと物理ストレージの移動ではない。このクラウド世界で起きていることは、旧世界からAWS,Azureという世界への住民の大移動である。

個人的には、あらゆるサービスがOS上のインストールという手続きを踏まず、AWS,Azureポータル上での適用操作ワンクリックによって実現できる時が来ると思う。そのためにAmazonとマイクロソフトがあらゆる有力なソフトウェア会社を買収し、AWSとAzureという世界のインフラ提供者という住人として人口を増やし続けるであろう。きっと、UIPATHなどのRPAツールも、近いうちにAWSとAzureの住人の一部になるはずである。私たちはその時、物理なのかクラウドなのか、果たしてどちらの世界の住人なのか。それは個々人が決めれば良いことである。確実に言える事は、クラウドの世界は広がりつつある。そして、その世界の住人になるためには、一定期間の学習をして備え、新たな世界のルールを学ぶ期間が必要だという事だ。

ただし、常に大切なのは基礎である。ネットワークで言えば、プライベートアドレス、グローバルアドレス、サブネットマスク、ネットワーク部、ホスト部の様な基本こそが、AWS,Azureの世界の共通言語であることは何ら変わらない。「大切なのは基礎・基本に充実であること」という事実は、古くからのエンジニアと何も変わらない。また、私たちが埃を被りながら机の下に潜ってLANケーブルを配線したり、重量の重いブレードサーバを3人がかりでラックに取り付けたりした経験は、単なる郷愁だけでは無く、いつかきっと私たちをクラウドの世界でも救ってくれると信じている。私たちは郷愁を感じながらも、新たな世界に旅立たねばならないのだ。きっと。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です